◎TARGET さんの感想・評価
3.3
【残念賞】ストーリー構成が雑すぎて冷めた
❏総評
細田守監督作品。
前作の「時をかける少女」が面白かったので見てみたけど
う~んちょっと物足りなかった。何かイマイチだった。
❏作品テーマについて
テーマは以下の2つ
「コンピュータに依存しすぎる社会への警告」
「(大)家族の絆、人の絆」
そしてこの2つのテーマを交差させたものが、この物語の骨組み。
コンピュータに依存した社会で問題が発生したけど、
家族の絆、人の絆があれば乗り越えられるんだ。涙。(←でなかったけどw)
テーマと骨組みは別に悪くない。いくらでも面白くできそうなテーマだ。
❏何故イマイチだったのか?
・2つの作品テーマを結びつけて、物語を収束に導くために不合理で必然性がない設定を多用しすぎ
・問題を解決したのは「家族の絆」ではなく「個人のスキル」の度合いが強いのに、
映画は「家族の絆」で解決したような印象操作をしている
上記の2点により冷めてしまった。
一旦冷めた気持ちは温まることなくラストまで継続。
以下、具体的にネタバレ込みでダメなとこ書きますね
{netabare}
1. OZシステムにリアリティがない。
これは技術的にハードルが高すぎて現実的に不可能という意味ではない。
仮に技術的に可能だとしても、このようなシステムを多くの人が利用し、
ここまで人々の社会の隅々にまで入り込むはずがないという意味だ。
ツッコミどころはたくさんある。
・仮想世界に店舗を出すメリット、必要性が見いだせない
(アバターがアバターの服を買うなど仮想世界内だけで完結するものは別として)
・社会インフラと仮想世界がつながるメリット、必要性が見いだせない。
しかも、OZシステムがハッキングされただけでこの大騒ぎって、どんだけ脆弱なのかw
普通はセキュアなシステムとは外の世界と繋がらないようにするものだ。
だからこんなこと100%ありえないと感じてしまう。
・AIはゲームをしたいんだみたいな感じだったが、
何故AIはそう思うのか?米国政府が興味を持つようなものがそんなんでいいのか?
・AIがアバターとして視覚的な存在になって、
戦闘行為とかするのは非効率じゃないのか。(AIさん遊びたかったの?)
・アカウント乗っ取るとAIの戦闘力が増す意味がわからん、ハッキング技術があるなら
数値調整すりゃいいじゃんw
・衛星落とすのになんでAIさん2時間くれたの?そのまま落とせよw
設定担当の人にITリテラシーが無いか勉強不足なのかもしれないし、
視聴者はITリテラシーが無いという前提で、わかりやすくするためにこのような表現になったのかもしれない。
いずれにせよ、もうちょい煮詰めて欲しかった。
2. 家族の絆のおかげで問題が解決したのか?
映画では一生懸命そういう風に見せようとしてますが、
問題を解決したのは結局のところ「個人のスキル」です。
AIと戦闘できたのも、池沢佳主馬の「スキル」だし
AIに花札で勝てたのも、篠原夏希の「スキル」だし
最後に暗号解いたのも、小磯健二の「スキル」だし
AIを制御できたのも、陣内侘助の「スキル」なのだ
ちなみにAI作ったのが陣内侘助ってのもOZシステムに負けず劣らず都合が良すぎで閉口。
栄婆ちゃんが、色んな人たちに電話かけてがんばってたり、
陣内家の男性陣が、仮想世界内でアバターでちょびっと助けてくれたりして、
家族が最後一つになって雰囲気はよくなってたけど、
問題を収束させる役にたったのかというと残念ながらほど遠いw
花札のシーンで世界の人が協力してくれたのは唯一スキルではなく「絆」が
役に立ったシーンですが、設定に必然性がなく冷めながら見てたので
ここも感動が薄まった。
このシーンを活かすには、
例えばもっと前の場面で非協力的だった傍観者を伏線として描いておいて、
そしてラストのここにきてようやくなんらかのきっかけで協力させるとかしないと薄いです。
唐突すぎて「あ、助けてくれてありがとう。ややジーンとした」レベルwです。
映画製作者は
家族が一つになって問題解決したよーやった!→感動
って方向に持ってきたいのに、
こちらはスキルで解決しただけじゃん って思ってるので
正直終始興醒め状態ですw
スキルを身につけるのに血の滲むような努力をして、
最後、それでAIを倒すのなら感動できるでしょうが、
スキルで解決しても「すごいじゃん」って一人ぐらい若い子が言うだけで
大家族の殆どはスキルの凄さを誰も認知していない。
なんかこのレビュー書いてて段々腹が立ってきたw
{/netabare}
❏ささやかなフォローをしてみる
物語の進行中にいちいち設定で冷めながら見てましたが、
人物の表情や心理描や声優さんの演技に救われて、
他の面に関しては楽しく見れた。
なので上記でダメ出しは多いけど、時間の無駄とかにはならなかった。
さらに言うと設定の部分や絆の描き方に何ら疑問を持たずに見れたラッキーな人に
とっては素晴らしい作品だったのではないかと思う。
❏世間一般の評価
・観客動員数123万人
・Blu-ray Discは初登場5.4万枚の売上げで週間ランキング1位
・初動記録としては当時のアニメ作品歴代1位
・BD総合歴代2位
・同日発売のDVDも総合ランキングで初登場5.5万枚で1位
・同一アニメ作品のDVD・BD両メディアダブル首位
・シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門 (Gertie Award) 最優秀長編作品賞(第42回)
・日本SF大会星雲賞メディア部門(第41回)
・『金曜ロードショー』での地上波初放送視聴率は関東地区で13.1%
・『金曜ロードSHOW!』2回目の地上波放送。視聴率は前回を上回る14.1%
↑自分の感覚との違いにびっくり。
何でここまでの評価と実績があるのか疑問。
作品のプロモーションにお金かけたから売れただけなのでは?と疑念を払えないw